中高年者の代表的な趣味活動として「山歩き・ハイキング」があります。
はるか遠くに見えた山頂に、数時間後に到達できた時には、あらためて人間の持つ「歩く」という機能の素晴らしさを再認識することができます。
こうした山歩きやハイキングの時の「歩き方」に注目してみると、なるべくエネルギーの消耗や筋肉への負担を少なくするために、歩幅を狭くし、ゆっくりしたペースで歩きます。
さて、日常生活ではどうでしょうか。
運動不足や肥満の解消のためには山歩きとは反対に、より多くのエネルギーを消費することが有効です。
そのためには、さっさと歩く「早歩き」がとても効果的になります。
運動の消費エネルギーは次の計算式で簡単に求めることができます。
●消費エネルギー(kcal)=運動強度(係数)×体重(kg)×時間(分)
消費エネルギーは普段からの積み重ねが必要
運動強度の目安(厚生労働省,1994)は「ゆっくり歩行」の場合、男性0.046、女性0.043。「急ぎ足」の場合、男性0.082、女性0.076です。
したがって、体重60kgの男性が30分間歩行した時の消費エネルギーは、ゆっくり歩行で83kcal、急ぎ足で148kcalとなり、65kcalの差が生じます。
これは「あんパン」で例えると約半分に相当します。
こうした差の積み重ねがとても大切なのです。
次に「早歩き」の5つのポイントをご紹介します。
1 胸を張り、背すじを伸ばしましょう
2 視線をやや遠くにしましょう
3 かかとから着地するようにしましょう
4 いつもより、歩幅を広げましょう
5 いつもより、歩調をリズミカルにしましょう
このように歩幅を広げてリズミカルに歩く「早歩き」は、筋肉にも適度な刺激を与え、加齢による筋力低下を予防する効果があります。
大腿四頭筋(ももの前側)、大臀筋(おしり)、ハムストリング(ももの裏側)、下腿三頭筋(ふくらはぎ)が早歩きで使われる主な筋肉です。
また、つま先を上げ、かかとから着地するために普段あまり使われない前脛骨筋(すね)も使われます。
近年では介護予防が大変注目されています。
介護が必要になった原因として最も多いものは「脳卒中」です。
また、筋力低下が主要な要因になっている「転倒による骨折」も多くの割合を占めています。
「早歩き」は血管の老化を防ぎ、脳卒中を予防する代表的な有酸素運動であり、また筋力低下の防止も図れることから、介護予防を目指した高齢者に非常に適した運動であるといえます。